認知症の方の行動について
ほんの数か月でしたが、介護関係の仕事に携わりました。良くしていただいたにも関わらず、根性なしの私はすぐに辞めてしまったのですが、とても貴重な経験をいたしました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
介護関係の仕事の際、川崎幸クリニックの杉山先生の講演をお聴きする機会をいただきました。
治療の話や悪化防止といった医療的な面がメインではなく、認知症の患者さんの行動には理由があって、どのように世の中を見て人の言葉や環境に対してどのように考えて反応するのか、といった内容の講演でした。
「なるほどなぁ、そういうことなのか」と納得するところが多々あり、認知症に対する考え方が随分変わったので記事にしたいと思います。
杉山先生の「認知症をよく理解するための9大法則・3原則」では、認知症の患者さんが行動(私たちにとって困った行動)を取るとき、どのようなことがその患者さんの中で起こっているのか、ということが解説されています。
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第1法則:記憶障害に関する法則
まずは記銘力の低下です。要はひどい物忘れです。
今自分で話したことも聞いたことも直後に忘れてしまいます。同じことを何度も話したり聞いたりするのは、このためです。
本人からすると大切な話がきちんと伝わっているか、または大切なことを聞き逃していないか、を確認していることになります。何度聞いてもすぐに忘れてしまうのですが、繰り返します。私たちも同じように確認しますよね、それと同じだと思ってください。
次に全体経験の障害です。
例えば出かけていたのに出かけていないと言ったり、さっき食事をしたのにまだ食事をしていないと言ったりすることです。
本人は外出や食事の記憶がまったくないのに、家族から「今日はどこそこに出かけたじゃないの」ですとか、「もう食べたでしょう」と言われたらどう思うでしょうか。「そんなはずはない!」と思うはずです。本人の記憶と食い違うわけですから、強く反発することもあるでしょう。
最後に記憶の逆行性喪失です。
新しい記憶から忘れていきます。
80歳の人が30年分の記憶を忘れてしまいますと、自分は50歳だと思って生活しようとすることがあります。過去と現在を行ったり来たりすることもあるそうです。
息子や娘の顔を見て「どちらさま?」と問う背景には、「私は50歳だから55歳の息子がいるわけがない。じゃあこの人は誰だろう?」と考えている、とのことです。場合によっては「私にこんなことを言って、この人は何を企んでいるのだろう」と警戒することもあるでしょう。
私だって目の前に突然年上の息子が登場したら「この人はいったい何を訳の分からないことを言っているのだろう」と考えてしまいます。
記憶障害に関することだけ見ても、認知症患者さんの行動の理由がぼんやり理解できると思います。
続きます。